足腰にシモ、噛める時間もそれ程長くない。座して時計を見詰める勇気もなく、ブラリ彷徨う小心者約一名ここに在り。台湾、四国とアレコレ迷った挙句、行く先を「どうする家康」由来の名古屋方面としたのが移動の二日前。人差し指と親指を丸めたモノがその決め手。早速ネットでJR東海「ぷらっとこだま」を手配した。


久しぶりの新幹線、振り出しは名古屋。名鉄に乗り換えて犬山城、台湾やタイからの旅行客が多く城下は賑わっていた。天守閣への入場にも長い列、諦めて路地の蕎麦屋で遅いランチ休憩。名古屋に戻ってトヨタ産業技術記念館、これが結構な広さと展示物しかも要所に説明員も配置されていた。これで500円じゃ申し訳ない。機会があればもう一度、と思えた。今夜は禁酒、素泊まりホテルの部屋でコンビニ弁当で反省となった。

明日もまずまずの天気、感謝だ。今日は名古屋から名鉄河和駅、河和港から高速船で日間賀島(ひまかじま)と篠島(しのじま)を観光した後、三河湾を渥美半島の先っちょ伊良湖港、そして田原から豊橋泊まりのコース。天候も電車も港への乗り換えも順調、1時間もあれば巡れる日間賀島をのんびりウオーキング。絶景のこの島で宿泊も考えたが地震、津波を考えたら到底無理と悟る。そして次の篠島に渡ってから異変に気付いた。乗船券売り場にポンと置かれた白板に「欠航便」とあった。強風による高波。言われてみれば二つの島への移動、そこそこ波で揺れたっけ…。対岸の渥美半島・伊良湖港は断念して今きた島を逆戻り、明日予定していた岡崎城に攻め入った。

岡崎公園駅と中岡崎駅とは隣接、さながら新越谷と南越谷の関係。これもご縁、家康公の爪の垢でもとそのお城に上がり城下を見やる。学問がある御仁ならばたっぷりに時間を割いてふむふむ、なるほどの要衝と思えるけれど、そっちはからっきしダメ。早々に城下へ酒のアテを求めた。旧・八丁村で延元二年(1337年)創業「まるや」を訪ねた。「八丁味噌」ブランドを守るために原料と製法に拘る老舗の心意気が沁みたね。見学の後は直売所でお土産を買う。これで美味いモロキューを、手前味噌でした。そして今夜の宿、豊橋へ向かう。シャワーで身を清め今夜のグルメへ。立ち呑みで生ビールで蛍烏賊を流し、角打ちで原酒をキューっと。旅行中の深酒は禁物、サクッと上がるのだ。

予ての筋書に戻って、豊川稲荷が三日目のスタート。立派な佇まいに呆れる。多くの檀家があれこれを寄進、その名が刻まれる石塔や提灯などなど。困ったときの神頼みで70年余を生きてきたバチ当たり者、ここは100円で今後の人生を占ってみた。ヤッホー、「大吉」の二文字だ。心の中で大きくガッツポーズ、口元が緩み、目尻が下がり、下心も膨らむ瞬間だった。気をよくして東海道線を浜松へ動く。目的は二つ。まずは「楽器博物館」、70歳以上は入館無料と即大吉の効果。宇都宮や宮崎と人気を争う餃子、しかし残念。駅ビル「石松ぎょうざ」は行列が出来ていて電車に間に合わない。ここは空きっ腹を抱えて静岡行きの電車の乗客となる。腹の虫を黙らせるのが静岡での至上命令。グーグルマップの先達、「杉乃屋」はザ・ショーワな静岡おでんの聖地。あいにく甘味処、アルコールは無い。お茶の接待、串を5本いただき460円也。途中リックを背負った欧米人二人が店を覗いて行ったけど、「カミイン」と声を掛ければ良かったかも? 付け足しになるけれど、駿府城公園にも足を運んだぞ。

二泊三日の旅行は以上だが、今夜は沼津に宿をとってある。おでん屋の店主や客との「ハイチーズ」を思い出に東海道をガタゴト東へ。おでんだけじゃ腹が膨れない。ほぼ「ぬまずくわず」でここ着いた目的は、当地で勤務する長男との再会がある。今夜は久しぶりにその元気な姿、活躍ぶりを確認出来て酒肴が特別に美味い。うい〜。「朝メシをちゃんと食って、運転にも気をつけて、あちこちで可愛がって貰えるように」。馳走のお礼がわりに吐いた言葉が、野暮だったのかな? <完>

旅行期間 : 2023年4月16日〜18日