初めの尾張でモーニング

いつもは通過するだけの名古屋。改めて街を歩くのは実に44年ぶり、1972年の「合歓jazz-inn」で賢島に乗り換えの時以来だ。今回は新宿からバスで名古屋、市内に一泊して翌日に帰る駆け足日程。もちろんシニア特典を利用して出費を抑える。目的はモーニングと味噌煮込みうどん、「せんべろ」酒場である。老眼鏡を鼻メガネにしてiphoneで綴る徘徊記。しばしお付き合い願います。
新宿駅周辺に散在するバス発着所を一箇所に集約した「バスタ新宿」。今回はここから出発するWillerバス社主催のバス&ホテルパッケージツアーに初めて参加。格安ゆえ横四列座席、快適さは望めないと思っていたが、狭いながらも隣の座席の圧力を感じさせない配慮された作りは大したもの。正直、惚れ直した。朝の七時半発車。首都高を大橋JCT、東名に入った。
定員の半分程の乗客を乗せてバスは順調に東名、新東名と進む。浜松SAで、先勝のゲン担ぎ、宝くじBicを購入。煎じ詰めれば我が人生ツキあり、を信じて当選発表日を待つとしよう。

目的地の名古屋、午後一時少し前着。旅行目的の味噌煮込みうどん、山本屋に直行だ。モチモチで腰のあるうどん麺は関東人には新鮮、もちろん味噌との相性もベリグー。ペロリいただきました。
見てよ見てよ。注ぎ足し注ぎ足し、森羅万象の旨さのエネルギーをいただいた照り、グツグツと深い色あい。この味噌タレだけで白飯三杯いけるかもよ。鍋の宇宙感ハンパねぇ〜!
そして名古屋、夜の部のスタート。酒場放浪記+せんべろを併せ持つ店はズバリ名駅二丁目「のんき屋」しかない。手前と一軒先にも地元人御用達の店が有るのだが、雰囲気と佇まいはこの店には敵わない。お世辞にも小綺麗とは言い難い店に突入。「お邪魔します」と相席に割って入る。完全アウェイ感の中、ドス黒い味噌おでん三本と土手煮二本を瓶ビールで流す。「うめ〜」。濃いめの味噌が、風邪から回復途上にある胃袋に挑戦状を叩きつけた。こうなったら日本酒だ。しかも「二級」と短冊に記されている。お隣さんの呑みっぷりに煽られ、さらにハイボールと続けた。七十のどこぞのオヤジと乾杯っ!サッカーの大一番をすっかり失念する盛り上がりだ。勘定2,040円でした。ウィ。
枕が違ったせいかイマイチの目覚め。この朝は三番目の目的があるのだ。名古屋と言えばモーニング、しかも一宮はモーニング発祥だとか。尾張で初めのモーニングをいただかない手はない。ネットで調べると食べ放題の店がある。ホテルを六時半に出て、名古屋駅から尾張一宮駅に乗る。スマホ片手てにその店に迷いながら進んだ。「Fungo」の開店は七時半。間に合った。しかも口開けのようだ。
いや、ダメだ。後から出されたチキンカツ、焼きそばは残念ながら断念。もう一軒モーニングを予定した店があるが、もう入らない。観音寺から一宮経由で名古屋のホテルへ直行。チェックアウトまで胃袋と足腰をリセットだ。

腹ごなしを兼ねてホテルの在る丸の内から名古屋テレビ塔までえっちらおっちら。ピーカンのポカポカ天気、冷たいビル風に時折撫でられルンルンの足取りだ。紅葉の久屋大通りに名古屋のシンボルが光る。暇に任せて七百円を塔に投資。やはり上からの展望は流石だ。
味噌煮込み、安酒場、モーニングと本来の目的を達したところで、地下鉄で足を伸ばし熱田神宮へ動いた。身内すべての健康と家内安全を祈願して、自分に中吉のおみくじをいただいた。更にジャズ喫茶「YURI」で珈琲ブレイク。アナログ音盤とJBLが名古屋の最終スポットとなった。
そんな訳で、11,000円のバス&ホテル付のツアーが終わりに近づいいている。名古屋駅太閤口から定刻で発車したバスは新東名を東京へと走り続ける。
名古屋の街にはクリスマスのディスプレイが目立つ。「駆けつけ警護」で自衛官の生命が脅かさせ、仮にそこで死傷者が出れば「名誉の戦死」と煽り、愛国の「踏み絵」がメディアを通じて一般庶民に突き付けられる。子や孫の世代もず〜とクリスマスと正月が「ハッピー&おめでとう」と言い続けられる世であって欲しい。暗闇の車窓の先を見ていたらふと、そんなことを思った。

旅行期間は2016年11月15日〜16日