九州復興割で大分をあるく

4月の熊本地震は、熊本県を中心に九州全体に多くの爪痕を残している。震災による直接被害が熊本に比べれば少ないると言われる大分は観光への風評被害が広がっている。別府市の調査によると、2016年のゴールデンウィークに観光施設を訪れた人の数は前年比45.7%減少、宿泊客数は33.1%減少した。
地震、津波、原発の被害の傷が癒えない風景を自分で目の当たりにしたのはあの東日本大震災から5年が過ぎた今春。そこで遅ればせながら知ったことだが、復興ボランティアという積極的な働きかけでなくても、食べて呑んで土産を持ち帰る「観光」でもなんぼか役に立つ。理屈よりも行動である。
今回の大分行きは「九州復興割20,000円」の補助を得て、羽田〜大分空港の往復航空+大分市内ホテルが10,800円とありがたいお値段。もちろん補助金は税金、その分は今回の旅行でお返しする考えだ。
先ずは温泉地、別府へ。駅周辺に点在する温泉のひとつ「竹瓦温泉」からスタート。風情ある佇まい渋い造りはイカニモtheオンセン。ここの目玉は砂湯だ。砂掛け姐さんにパチリして貰った首だけの姿、何とも情けない。
で、別府温泉の本丸「鉄輪」(かんなわ)を目指す。雑誌などで目にする湯煙モクモクあの光景が広がる。街はショーワの風情、ここでも韓国や台湾の旅行者が目に付く。昼メシは中心から外れたショーワの食堂でビール&焼きそばをいただく。
当初の筋書きは鉄輪温泉からバスで大分駅に直で入る予定だが、電車で大分に向かった方が便、料金ともによろしいことが判明。再び別府駅に戻り、臼杵行きのローカル電車に揺られ大分駅に向かう。さすが県庁所在地、市役所前の通りもかなりなものだ。ホテルで下着をゴシゴシして、今夜の祝盃会場をあれこれ探ろう。
ネット&ホテル受付の口コミ情報から第一候補「こつこつ庵」、第二候補「かみ風船」と決めていざ鎌倉。第一は定休日、第二の店も悪くなさそうだ。確かに地元サラリーマン御用達、六時前からグループ客で席が埋まっていた。貫禄ある梁、落ち着いた照明、店員の動きもいい。ここ大分に来たからには外せないものが二つある。関の鯵と鯖、それに「りゅうきゅう」なる鮮魚の和え物だ。もちろん地名を冠したビール、地焼酎、地酒が料理を盛り立てる。名物はその土地でいただくのがベスト。ウィ。至福の夜が溶けていく。
ありがたい。大分は今日も傘の心配はない。方や関東地方は台風の余波か連日、雷雨で愚図ついた空模様。「心掛けだな」と勝手に思い込んで、大分駅8時56分、普通列車で由布院に動いた。
初めての由布院、駅から金鱗湖までをスタコラ歩く。大型バスで韓国からの団体がドサっと降り立ち、途中から道路が混み始めた。さすが国際的な温泉県、福岡から熊本、別府とルートが出来ているようだ。しかしメイン道路から一本外れるとのどかな風景が由布岳の麓に広がっている。夏の太陽を隠れ、金鱗湖畔でいただく地サイダーは清涼感たっぷりであった。
大分のソウルフード「とり天」で昼メシをとった後、歩き疲れた汗の体の労わりとバスの時間調整を兼ねて、地元民御用達の公設温泉施設にお世話になる。腹を満たした真昼間、青い空に描かれた白い雲を露天風呂から見上げると加山雄三よろしく「僕ぁ幸せだな」と台詞が飛び出す。やはり健康に感謝だな。
由布院から大分空港までバスで小一時間、1,550円。ソラシドエアは満席、定刻を30分遅れて羽田空港に着いた。「砂風呂温泉やってみたいな」というツレのリクエスト。今度は鹿児島、指宿を目指そうかな?(完)

💮旅行期間:2016年8月23日〜24日